2015年12月25日
地方競馬からスターホースを
11月5日に門別競馬場で行われた交流Jpn3第42回北海道2歳優駿は見応えのあるレースだった。直線はJRAのエネスク、キョウエイギアと、地元・北海道のタイニーダンサー、スティールキングの4頭による激しい叩き合い。最後は大外の5番人気タイニーダンサーが強烈な末脚で首差抜け出し、重賞3連勝を決めた。
タイニーダンサー(牝、北海道・角川秀樹厩舎)は父サウスヴィグラス、母キハク、母の父アサティスの血統。5月のデビューから通算8戦5勝で、重賞は栄冠賞、フローラルC、交流Jpn3エーデルワイス賞に続いて4勝目。エーデルワイス賞との2歳交流重賞連覇は1998年のエーデルワイス賞創設以降、2001年のJRA馬フェスティバルに続いて2頭目。地方所属馬では初の快挙となった。北海道2歳優駿の地方馬勝利は、JRAとの交流重賞となって以降、10頭目だった。
タイニーダンサーは11月13日付で地方競馬の登録を抹消。JRAに移籍予定のため、ラブミーチャン、ハッピースプリントに続く2歳馬によるNARグランプリ年度代表馬のタイトル獲得は現時点では微妙となったが、函館2歳Sで4着になっているように芝適性もあり、JRA3歳牝馬路線での活躍、そして02年アローキャリー以来となる地方出身馬による桜花賞制覇へと期待が高まる。
北海道2歳優駿の2着馬も同じ北海道・角川厩舎のスティールキング(牡、父シルバーチャーム、母グルカッシュ、母の父マキアヴェリアン)。エーデルワイス賞の2着も角川厩舎のモダンウーマン(牝、父サウスヴィグラス、母スマートダズル、母の父スマートボーイ)で、両レースとも角川厩舎が1、2着を独占した。もともと2歳馬の育成・調教には定評のある厩舎だったが、門別競馬場に坂路コースが導入(12年4月)されたことにより、さらにそのレベルが高まってきたと言えそうだ。
タイニーダンサーに見劣りしない素質馬がモダンウーマンで、同馬はエーデルワイス賞後、11月17日の川崎・ローレル賞(地方交流)に遠征して逃げ切り勝ち。デビュー3連勝で圧倒的人気に推された船橋のスアデラ(牝、父ゴールドアリュール、母マサノミネルバ、母の父ラムタラ)に2馬身差、3着以下にはさらに9馬身差をつけるレースだった。モダンウーマンはこれで7戦4勝2着3回と100%連対を続けている。
北海道デビュー馬の活躍は全国に広がっている。トロヴァオ(牡、父カネヒキリ、母サワズソング、母の父コックスリッジ)は門別で3戦1勝後に大井に移籍して、ハイセイコー記念を制覇。北海道・岩手交流の盛岡・知床賞は北海道勢が1~3着を独占。笠松・ラブミーチャン記念もミスミランダー(牝、父アッミラーレ、母ミスプロ、母の父アフリート)が2着馬に3馬身差をつけた。園田プリンセスCを制したランランラン(牝、父エクラヴァンクール、母ラメラメ、母の父サクラバクシンオー)はその後、園田に移籍している。JRAに移籍したフレンチイデアル(牡、父キンシャサノキセキ、母イットーフレンチ、母の父フレンチデピュティ)は芝の特別戦で連続3着と善戦を続けている。
その他、ラッキーバトル、リンダリンダ、キーパンチャー、タービランスなども今後は全国の舞台へ飛び出していくはずで、ホッカイドウ競馬の2歳勢は空前のレベルの高さを示している。
2歳馬のレベルアップは北海道だけではない。デビューから無傷の6連勝を挙げた川崎のポッドガイ(牡、父パイロ、母ライヴマジック、母の父シャマーダル)、15年に死亡した名種牡馬アジュディケーティングの「最後の大物」(最終世代は14年生まれの1頭)と言われている浦和のアンサンブルライフ(牡、父アジュディケーティング、母ゲイリーエンジェル、母の父ダンシングブレーヴ)、南部駒賞で北海道勢3頭を退けた岩手のメジャーリーガー(牡、父ブラックタイド、母ストロベリーフィル、母の父サクラチトセオー)なども各地区で快進撃を続けており、今後のJRA勢との対戦が大いに楽しみだ。
JRAの年間売り上げは14年まで3年連続で増加しており、15年も増加が見込まれているが、4大本場開催や重賞の増加の影響が大きいと考えられ、これらは今後も続けられる策ではない。スターホース、特にハイセイコーやオグリキャップが空前のブームを巻き起こしたように、地方出身のスーパースターの登場が待望されている。日本馬の血統レベルが底上げされ、血統による能力差が少なくなってきたと思われる今なら、再び地方から名馬が登場する可能性は高まってきているのではないだろうか。