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馬産地往来

2005年4月1日

道営競馬よ、甘えるな

再建最終年度なのに改革策はなし

後藤正俊

 2005年度のホッカイドウ競馬が4月20日の札幌開催からスタートする。 昨年度に比べて、 札幌を6日間、 旭川ナイターを3日間増加させ、 門別を7日間減らした程度で、 大きな変革は行われないまま開幕を迎えることになる。
 それでも北海道競馬事務所は昨年度実績より18億円増の131億円の売り上げを見込み、 単年度赤字を10億8000万円まで減少させる計画を立てている。 これは、 今年度から本格活用される札幌中心部の場外発売施設 (ミニ場外)・Aiba札幌駅前での大幅な増収を期待しているからだ。
 確かに札幌中心部の場外発売所開設は、 ホッカイドウ競馬の永年の悲願だった。 札幌市内には場外発売も行う札幌競馬場があるものの、 JR、 地下鉄駅からはやや離れているし、 駐車場も少なく、 ファンが気軽に立ち寄れる立地条件ではない。
 しかも札幌競馬場はJRAの施設であり、 JRAの開催と発売機器の点検があるため原則的には火曜~木曜しかホッカイドウ競馬は使用することができない。 ドル箱の札幌で発売できない日は開催しても仕方がないため、 ホッカイドウ競馬の開催も火曜~木曜に限られており、 月曜、 金曜が祝日でも開催できないことがほとんどだった。
 現時点でのAiba札幌駅前は、 立地条件は確かに最高だが、 発売機が16台では到底、 札幌競馬場の代用はできない。 昨年末に大井競馬場の統一GI・東京大賞典を発売したときには、 立すいの余地がないほど人が詰め掛けてパニック状態に陥っていたが、 それほど売り上げは伸びていなかった。
 このように、 やはりミニ場外では限界があるし、 開設当初に記録した売上増 (計画比31%増) は新規ファンが増加したからではなく、 これまで札幌競馬場を利用していたファンがAiba札幌駅前に移ってきただけと見るべきなのかもしれない。
 Aiba札幌駅前の開設はホッカイドウ競馬にとってプラス要因であることは間違いないが、 それほど大きな期待をかけるのは疑問だし、 ましてや月曜、 金曜の祝日開催を行うことは不可能で、 実際に今季の日程でも月曜祝日の開催は予定されていない。 Aiba札幌駅前が救世主になるという考え方は、 流行の言葉でいえば 「妄想」 である。
 それなのに、 ホッカイドウ競馬はそのほかの新たな改革をまったく行っていない。 「スタリオンシリーズが増える」 「日本軽種馬協会からの補助が増える」 というが、 それはまったく他人任せのもの。
 今年は経営改善5カ年計画の最終年にあたるし、 宇都宮、 高崎が廃止され、 その他の全国の地方競馬も生き残りのために必死に策を練っているというのに、 いくら2年続けて前年度プラスの売り上げを記録しているからといって、 当初赤字を10億円以上も見越しているホッカイドウ競馬は、 あまりにも呑気に見えてしまう。
 改革といっても、 お金を使えないのだからハード面での大きな改革は難しい。 最低賞金のアップをはじめ、 旭川競馬場の馬場改修、 出馬表の改善などやってほしいことは山ほどあるが、 これは我慢しなくてはいけないのかもしれない。
 だが、 「何とかホッカイドウ競馬を盛り上げていきたい」 と従業員が必死になっている姿勢は、 必ずファンの心を打つはずだ。 コスモバルクがJRAのレースに出走するたびに、 2日間も徹夜で並び続けてパドックのもっとも目立つ場所に横断幕を掲げている広報職員の姿こそが、 いまホッカイドウ競馬がやらなければいけないことではないのだろうか。
 まずはトップの立場にある人が、 委員長室に座っているのではなく、 スタンドに降りていったり、 厩舎を回ったりして、 生の現場を体感することから始めてほしい。 本来であればそんなことは改革初年度からやっていなければならなかったはずだが、 いまからでもやる価値はある。 いまのホッカイドウ競馬にとって何が不足しているのかを、 トップの人間が肌で感じなければ改革をできるはずがない。
 前記のとおり、 今年が改革5カ年計画の最終年なのである。 「売り上げが伸びているのだから、 今年も単年度赤字はあっても、 売り上げが昨年度を超えれば存続できるだろう」 などという甘えた気持を持っていたら、 取り返しのつかない事態を招く恐れがあることを、 主催者は十分に考えてもらいたい。

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