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馬産地往来

2011年2月24日

JRA賞とNARグランプリに思う

JRA賞にも「特別表彰制度」の創設を

後藤 正俊

 1月24日に「JRA賞」の表彰式が華やかに開催された。表彰関係者の多くはタキシードで正装し、記者の取材に対していつもは厳しい表情で言葉少ないコメントしか残さない調教師や騎手も、この日ばかりは満面の笑みで・おいしい・話を披露してくれる。まさに「晴れ舞台」である。年度表彰は関係者にとってそれほど大きな価値があるものなのだ。
 2月3日には地方競馬の年度表彰である「NARグランプリ」も盛大に行われた。その年度に活躍した馬、騎手を表彰するという制度は同じだが、NARグランプリにはJRA賞の特別賞とはややニュアンスが違う特別な表彰が行われている。その名の通り「特別表彰馬」である。1995年から正式な賞として設置された。その選定条件は以下の通り。

①選定する馬 地方競馬の発展に顕著な功績があったと認められる馬、その他、特に顕彰に値すると認められる馬
②選定対象の範囲及び期間 地方競馬に関連のある馬を対象とし、当該選定の事由が生じた期間の功績又は成績等により選定する
③候補馬 委員会事務局(地方競馬全国協会)及び委員会委員により推薦された馬

 過去の受賞馬は▽1995年トウケイニセイ、ライブリマウント▽96年ホクトベガ、ホワイトナルビー▽99年イナリトウザイ▽00年ハイセイコー、ファストフレンド▽01年ノボジャック▽02年ゴールドアリュール▽03年アドマイヤドン、ロジータ▽04年ニホンカイローレル▽05年タイムパラドックス▽06年ブルーコンコルド▽07年ヴァーミリアン、ミルジョージ、ワカオライデン▽08年ホスピタリティ▽09年アジュディミツオー、タガミホマレ。
 このタイトルの設立当初は、地方を舞台にしたダートグレード競走で大活躍したJRA所属馬の功績を称えるタイトルがNARグランプリに設けられていなかったことから、この「特別表彰馬」で補っていた部分があったが、08年に「ダートグレード競走特別賞」が設置されてからはJRA所属の地方競馬活躍馬を表彰対象から除くことになった。
 長年にわたって地方競馬の発展に功績を残してきた馬への表彰のタイミングはそれぞれで、07年ミルジョージ、ワカオライデン、08年ホスピタリティは死亡した年に、09年アジュディミツオーは引退した年に表彰された。また同年のタガミホマレは、この年に全国のアラブ単独競走が終了したことを受けて「すべてのアラブ馬への感謝の気持ちを込めて、特にアラブ競馬の発展に顕著な功績があったタガミホマレを表彰する」という形での表彰だった。
 そして10年は、地方所属馬として初の海外GIレース優勝(06年シンガポール航空国際カップ)という快挙を成し遂げるなど、ホッカイドウ競馬の星として幾多の活躍を見せたコスモバルクが受賞した。
 地方競馬所属のままJRA・GIレースで活躍を続けたコスモバルクが地方競馬関係者、ファンに与えた夢、功績は絶大なものがあり、前年のアジュディミツオーと同様に現役引退のタイミングで候補馬として推薦され、委員会でも満場一致での授賞が決まった。
 この委員会では、ほかにも2頭の候補馬が審議された。1頭は10年7月3日に25歳で死亡したオグリキャップ。同馬の競馬発展への偉大な功績は誰もが認めていることだったが、オグリキャップはまだ「特別表彰馬」制度が設置される前の1990年に、似た意味合いを持つ「特別賞」を受賞していたため、“重複受賞”を避ける意味から候補馬から除外された。
 もう1頭は10年のホッカイドウ競馬で牡馬を退けて3歳3冠を達成したクラキンコで、単に3冠馬になっただけではなく、道営競馬版の「ダービー」である北海優駿を父クラキングオー、母クラシャトルに続いて「父母娘ファミリー制覇」という世界的にもほぼ例がない偉業を達成し、ホッカイドウ競馬を盛り上げて存続決定にも影響を与えたことから推薦された。
 だが「特別表彰馬」はこれまで単独の1頭が対象であり、「父母を含めた偉業を、娘が代表して授賞するのはどうか」という意見も出て、採決の結果、わずかに及ばずに授賞には至らなかった。それでも、全国区での活躍がなかった一地方競馬の所属馬が、選考委員会で話題になったということだけでも関係者にとっては励みになることだったに違いない。
 JRA賞の「特別賞」は選から漏れた「残念賞」的な意味合いだし、「競馬の殿堂」顕彰馬制度は「実績」のみの評価で対象はJRAに在籍したことがある馬。いくら日本競馬に多大な功績があっても輸入種牡馬のノーザンテーストやサンデーサイレンスは対象外だ。「特別表彰馬」や以前の「大衆賞」のように、功績に対して「感謝」の気持ちを示すようなタイトルが、JRA賞の晴れやかな場で行われてもいいのではないだろうか。

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