2020年4月24日
コロナ禍と競馬界
新型コロナウイルスの感染拡大で競馬界も大きな影響を受けている。ドバイワールドCデーは直前の中止決定により、すでに現地入りしていたアーモンドアイら日本馬20頭がそのまま帰国した。現地では十分な運動ができていなかったようで、今後の体調管理・ローテーションにも影響が出てくるかもしれない。早めに現地入りしていたルメール騎手、古川騎手は帰国後2週間の外出自粛により、4月7日まで騎乗ができなくなった。そのドバイだけでなく世界の主要競馬場が開催中止となっており、今後の海外遠征も予定が立てられない状況になっている。世界中がパニックになっているいまの状況を考えれば仕方がないことだが、今後を考えると様々な心配も出てくる。
スポーツ界では東京オリンピック・パラリンピックは1年の延期となり、プロ野球では阪神の3選手が感染したことで開幕日程にまた狂いが生じるかもしれない。Jリーグでも選手に感染者が出て今後に暗雲が立ち込めている。プロバスケットボールのBリーグは今季の残り試合を中止した。競馬にしても、この原稿を書いている3月末時点では地方競馬も含めて国内すべての開催は無観客で実施しており、インターネット・電話投票のみでも前年比80%程度の売り上げを確保しているが、もし競馬関係者に感染が広がるようなことがあれば、一定期間の開催中止もありうる。
3月28日の開催から馬主も競馬場への入場を自粛し、表彰式もなくなった。馬主にとっては最大の喜びを奪われてしまった形ではあるが、開催がなくなった際の損失を考えれば仕方がないことだっただろう。だがトレセン、競馬場には多くの人が携わっている。競馬開催に最も重要である騎手には、調整ルームに入る開催前日以外にも全面的な外出禁止措置が取られていいと思うが、同居する家族にまで禁止措置を講じることは難しい。トレセン外で暮らしている騎手も多くいる。騎手を取材するマスコミをはじめ、エージェントやバレットを完全に排除することも難しいだろう。騎手1人が感染すれば、調整ルームに入ったすべての騎手が濃厚接触者となる心配もあり、開催は絶望的になる。常に最悪の事態を想定しながら運営していかなければならない。
それは馬産地も同様だ。日本経済の危機は、当然のことながら経済の中心を成している立場の馬主にも大きく影響してくる。開催中止で賞金収入がなくなる事態になればなおさら悪化する。馬の購買価格も例年通りというわけにはいかないだろう。7月13、14日にはセレクトセールが、7月21日には北海道市場セレクションセールが開催される予定だが、海外からの購買者が少なくなることは避けられないし、今後の感染拡大次第では国内の購買者数にも影響の出る恐れがある。生産者保護の措置を講じておく必要があり、例えば今シーズンの種付料をいまから値下げしたり、支払いを一定期間猶予したりなどの施策があっても良いのではないか。馬産地全体が一丸となってこの危機を乗り切ってもらいたい。
新型コロナウイルスの影響で外出を自粛する人が多くなり、週末は無観客期間のみ無料となっているグリーンチャンネルでじっくりと競馬を楽しんでいるファンが多いと思う。BS、CSの有料チャンネルを視聴する習慣がなかった人の中には、初めてグリーンチャンネルの競馬実況放送を観たという人もいることだろう。実際、有料視聴者数は25万人程度で、競馬ファンの数から比較するとごく一部である。これは開局当初から指摘していたことだが、馬券の売り上げにつなげるためのJRA関連団体による放送なのだから、全面的に無料放送にすべきではないだろうか。
今回の無観客競馬実施によって、電話・インターネットでの馬券購入者がいかに多くを占めているかが改めて示された。競馬の最大の楽しさは競馬場に来場してライブで楽しんでもらうことにあるが、地理的にそれが叶わないファンが大多数だ。現在でも平日には無料放送時間帯が設定されているし、セレクトセール、セレクションセール、JRAブリーズアップセールの中継も無料で利用できるが、競馬をより深く知るための番組も制作されている。特に海外競馬情報や海外レースの放送は充実している。馬産地情報の番組に関してはまだ物足りなさも感じるが、生産者団体がもっと番組制作に協力していけば、一般競馬ファンがさらに馬産に興味を持ち、いずれはクラブ法人を通して競馬に参加したいなどと思ってくれるかもしれない。
月額1200円(BS、CS=税別)の視聴料金は、有料放送を申し込もうとする際には高く感じるかもしれないが、1カ月の馬券購入額を考えればごく僅かな金額だろう。グリーンチャンネルの年間視聴料収入は約38億円だが、無料開放すれば、特にBSイレブンで放送を行っていない午前中のレースで、それよりもはるかに多額な売り上げが期待できるのではないだろうか。映像でより競馬を楽しく観戦してもらい、この無観客競馬で落ち込んだ分の売り上げを取り返すためにも、正常化後もこのまま無料放送を続けてもらいたいと思っている。