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馬産地往来

2008年4月1日

道営競馬の救世主になるか

新公社に業務のスペシャリスト招へい

後藤正俊

 日高管内7町、 日高軽種馬農協などで構成する日高軽種馬振興対策推進協議会の臨時総会が3月15日に開かれ、 北海道軽種馬振興公社の新体制などを決めた。 ホッカイドウ競馬は09年度開催から、 馬産地主導の組織として生まれ変わる北海道軽種馬振興公社が運営を行っていくことが決まっている。
 同協議会では、 3月末で退任する西山泰正理事長 (北海道農政部長) の後任として、 新理事長に三輪茂日高町長を推薦。 5月からは現BTC (軽種馬育成調教センター) 日高事業所の井村勝昭所長を参与として招へいし、 専務理事のポストで現場の陣頭指揮に当たってもらうことを決めた。
 09年からのホッカイドウ競馬を馬産地主導の組織が運営していくことには、 期待と同時に大きな不安もあった。 生産者団体はサラブレッドに関してはもちろんプロではあるが、 競馬運営となるとまったく別物だからだ。 馬産地で組織する北海道競馬運営改善対策室がホッカイドウ競馬の支援を行っており、 ファンサービス面に関してはある程度の実績がある。 だが競馬の根幹である 「番組」 をはじめとする 「業務」 面は、 馬にくわしい程度の知識ではこなせるものではない。 もちろん、 いまの公社職員の大半はそのまま新公社に移るのだからベテラン職員はいるが、 トップがしっかりとした姿勢を持っていなければ職員にしても腕を発揮することができない。
 この点はいまの北海道主導の競馬でも不足していた部分で、 主催者のビジョンが見えなかった。 ホッカイドウ競馬というのはどういう競馬をやっていく組織なのか、 JRAや南関東、 岩手などとはどのように違う競馬を目指しているのか、 JRAとの関係はどうしていくのか、 すべてに行き当たりばったりで 「何となく」 やってきたようにしか見えなかった。 それがこれだけの大赤字を抱えてしまった最大の原因だったと私は見ている。
 それだけに、 井村勝昭氏が陣頭指揮を執るというのは、 願ってもない人事となった。 井村氏はJRAでずっと業務畑を歩んできた業務のスペシャリストだ。 札幌競馬場在任時はホッカイドウ競馬と直接的に関わってきていたので、 その内部について、 問題点についてもじつにくわしい。 また本部業務部長としてJRAと地方競馬との全体的な関係についても常に模索し続けてきた。
 さらにBTCの所長としては、 育成現場で 「強い馬づくり」 の最前線で活躍してきた。 井村氏在任中にBTC出身馬の成績が飛躍的に高まったことでも、 その手腕がどれほどのものであったかがうかがえる。 ホッカイドウ競馬を引っ張っていくには、 これ以上の適任はいないといえるほどの人材だ。
 まだ井村氏と今後のホッカイドウ競馬の方針については話をしていないが、 おそらくは2歳戦をさらに充実させ、 南関東や岩手にはもちろん負けないレベルの、 JRAに匹敵するレベルの2歳戦をホッカイドウ競馬の目玉にしていくのではないだろうか。
 全国的な情報が乏しく、 強豪との対戦もなかった時代には、 弱い馬同士のレースでもファンはある程度盛り上がっていた。 だが交流競走が活発に行われるようになり、 インターネットなどの発達で全国の情報が簡単に手に入るようになってくると、 その地区の地方競馬の本当の実力が認識されてしまい、 圧倒的に弱いことがわかってしまうとなかなか盛り上がれないものだ。 だがホッカイドウ競馬の2歳戦に限れば、 決してJRAにも見劣らないレベルがある。
 入厩馬の血統レベル、 育成施設などの違いで3歳以降になるとはっきりとした差が出てくるが、 2歳戦には将来のJRAや南関東のクラシック候補になるような馬もいる。 実際、 昨年の2歳戦からは、 全日本2歳優駿に遠征してイイデケンシンの2着になったあと川崎に移籍し、 京浜盃を圧勝したディラクエが登場している。 井村氏が門別競馬場の施設改善や、 2歳戦の番組体系再編に取り組んでいけば、 2歳戦のレベルはますます高まることになる。
 競馬を知り尽くした男が、 ホッカイドウ競馬をどう立て直していくのか、 その手腕に注目していきたい。

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