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日高便り

2016年10月25日

台風の被害が相次いだ日高

北海道事務所・遠藤 幹

 今年は北海道も台風の直撃を相次いで受けた。日高地域も十勝や上川ほどではなかったものの、各地でさまざまな被害が発生した。HBAのサマーセールも台風の直撃を受け、当日上場できなかった1歳馬を、セール後半に上場させるというウルトラCで窮地を乗り切った。私の住む日高町厚賀地区は、平成15年に台風接近による大雨で河川が氾濫し大きな被害が出たところだが、今回も周辺では結構な被害が出たようで、今も災害の爪痕は至る所に残っている。
 8月23日午前2時半頃から、台風9号の接近に伴い、滝のような豪雨になった。あまりの激しい雨音に寝てもいられず、布団から起き出した私はネットやテレビの情報に釘づけとなった。雨は一向に止む気配がなく4時半頃サイレンが鳴り響き、地元の消防団に招集がかかる。ちょうどその頃に厚賀市街の小河川「美鈴川」が溢れ出し、市街の国道は冠水し、がけ崩れも起き土砂も次々と流れていたようだ。後でNHKのテレビ映像で繰り返しその様子が放映されていたが、地元の方々が懸命に土嚢を積んだり土砂をさらっていたりしていたのが、この時間帯。午前6時頃、台風は新ひだか町三石付近に上陸したが、幸いなことにこの頃から雨は小降りになり天気は一気に快方に向かい、この時点ではほっと胸をなでおろしたのだが、事態はそう簡単ではなかった。
 短時間ではあるが一気に降った雨は、至る所で土砂崩れや冠水を引き起こし、私の自宅周辺の道路(国道、道道、町道)を全て寸断し、出社もできない状態となった。厚賀を流れる「厚別川」は異様なまでに増水し、堤防から1メートル下あたりまで水かさが増し、その荒々しく流れる濁流を見ると堤防決壊間近のようにしか見えない。しかも国土交通省の河川情報ネットで確認すると、既に「氾濫危険水位」を超えている……何も避難の呼びかけがない状況を不安に思い、役場の防災担当課に電話すると、「え! それは見ていません。ただちに確認します」と信じられない回答が返ってきた。その10分後にNHKテレビで厚別川が氾濫危険水位を超えたと赤字でテロップが流れたのだが、つくづく災害時の避難は役所を当てにせず自分で情報を集め判断した方が良かろうと身をもって感じた次第。
 幸い徐々に水位は低下し、河川の氾濫という最悪な状況は免れたのだが、夕刻まで自宅に閉じ込められた状態になった。厚賀地区のF牧場の放牧地は比較的低みにあるため、流れ下った大量の雨水の通り道となり、放牧地は巨大な沼と化してしまった。後で聞けば牧柵が一部壊れ、土地もえぐられて土砂が相当流されたという。また厚別川近くのO牧場の採草地も巨大な沼になってしまい、採草地の間を通る町道は水没し通行不能となってしまった。

 この1週間後、8月30日に岩手に上陸した台風10号は、北海道南部をかすめるように西へ移動し、北日高や十勝、富良野近辺に多大な被害をもたらした。日勝峠越えの国道274号線は橋が落ちるなどずたずたになったが、海岸沿いの馬産地は激しい暴風雨には見舞われながらも、幸い前回より雨量は少なく、被害は大したことがなかったように思われたのだが。
 日高町清畠では、大しけと満潮が重なり高潮被害に見舞われたのだ。日高本線清畠駅近辺の住宅は大量の海水が入り込み軒並み床上浸水となり、1階の家財道具はほとんどダメになってしまった。水が引いた後、各家庭では総出で家の中の泥を掻き出し、使えなくなった家財道具を山のように積み上げていたが、被災された方は本当にお気の毒としか言いようがない。E牧場の放牧地は大量のごみも海水とともに入り込んでしまい、水が引いた後は一面ゴミだらけで使用不能状態である。
 この被害の中で、さらに絶望的な状況になったのは日高本線。今回の高波で清畠の慶能舞川にかかっていた橋が崩壊し、清畠~豊郷間の線路も至るところで寸断された。何より驚いたのが、砂浜が高波でえぐられて海岸線が後退してしまい、線路が海に近過ぎる状態となったことだ。ルート変更でもしない限り、列車を走らせること自体が無理だろうと思われる。昨年から一部運行を停止している日高本線だが、今回の台風被害がさらに追い打ちをかけるようなことになってしまった。このまま廃線になるのではとの憶測も流れていると聞く。
 軽種馬産業=自動車社会でもあり、鉄道の運休は直接的な影響はないように思われるが、地域の高校に通う子供たちの足や病院通いのお年寄りの足を奪っており、間接的であれ、そうした家族が大変窮地に陥っていることに変わりはない。好況が続いているように見える馬産地だが、急激に進む過疎化と壊れたインフラが、さらに地域の活力を奪うことにならないように、関係団体には急ぎの復旧再建を切にお願いしたいと思っている。

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