2015年1月13日
新種牡馬の到着に思う
12月7日朝7時。空気は凛と張り詰め、手元の寒暖計はマイナス13度を示している。ブリーダーズスタリオンに到着した馬運車から、1頭の競走馬が降り立った。11年の天皇賞・秋をレコードタイムで快勝したトーセンジョーダン号だ。栗東トレセンからの長旅の疲れも感じさせず、北の地に降り立ったトーセンジョーダン号は、何が気になるのか一点をじっと見つめたまま、しばらく屹立していたが、スタッフに促されて悠然と歩みを進め、厩舎に消えていった。すらりとした体のラインが印象的なトーセンジョーダン号の馬体重は490キロ余り。スタリオンで激戦の疲れを癒しながら、新たに種牡馬としての体作りに励むこととなるだろう。
有馬記念を現役最終戦とする競走馬も多いため、15年の新種牡馬の顔ぶれはまだ確定していない状況だが、師走になって各地の種牡馬シンジケート総会も相次いで開催される中、各スタリオン施設の種牡馬陣容や種付料も大方決定しつつある。そういった中にあって、今年は種付申し込みの出足が、例年以上に早い印象を受けている。
最大手の社台スタリオンでは、2トップのディープインパクトとキングカメハメハが、一般募集期間を設けることなく満口表示になったのは、前年と同じであるが、既にハービンジャー(受胎400万円)やルーラーシップ(受胎250万円)も募集を締め切った。ここまでは想定範囲なので、特に驚くところではないが、日高地域の種牡馬も続々と満口になりつつあるのだ(12月7日現在)。
ヴァーミリアン(受胎100万円)、ブラックタイド(受胎100万円)、ヘニーヒューズ(受胎300万円)、ダンカーク(受胎150万円)は既に満口。産駒成績が好調であったり、鳴り物入りで導入された外国産馬であったり、そのあたりが人気の理由だが、それにしても例年より出足好調だ。
また、日高地域の種牡馬の種付料もやや上昇傾向にあるようだ。この4、5年は一部の突出したスーパーサイアーを除けば、産駒成績がそこそこ良くても種付料を前年同額に据え置くケースが多かったが、今年はヘニーヒューズの120万円アップ(受胎300万円)を始め、スウェプトオーヴァーボードやスクリーンヒーローは、前年比倍額の受胎100万円になるなど、価格の改定も目立つのだ。
14年の馬産地は、まずまず好景気だったように思う。株高や輸出産業の好調もあり、馬主の方々の購買意欲が例年以上に旺盛で、また新規参入の方も目に付くようになってきた。セレクトセールやセレクションセールが好調だったのは言うまでもなく、中堅市場のサマーセールやオータムセールも、平均価格は際立った上昇を見せなかったが、軒並み万遍なく上場馬は売れて、売却率は01年以降のデータで見ても、過去最高の水準(61~62%)まで上昇した。また、競馬興行においても、JRAの売り上げも堅調な伸びを示し、目標の2兆5000億円の数字が視界に入りつつあるし、地方競馬も軒並み好調で、地元の道営競馬は前年対比17億円増の157億円まで売り上げを伸ばしており、競馬ファンも大変元気なのだ。
当然、私としては、引き続きこの好況が続いて欲しいと思うのだが、他力で願っていても始まらない。競馬産業の持続的な成長のためにも、生産の根幹を支える種牡馬事業をメインとした会社の業務に、日々地道に取り組んでいきたいと思う。新種牡馬の到着のたびに、いつもその思いを強くしている。