2018年10月25日
種牡馬の種付け頭数を分析する
2018年シーズンの主要種牡馬の種付け頭数が発表された。最多種付け頭数を記録したのはロードカナロアで、その数何と294頭。昨年ドゥラメンテが記録した284頭を超える国内史上最多種付け記録となった。2位がドゥラメンテで290頭、3位がモーリスの245頭。200頭以上を記録した種牡馬は8頭だった。
100頭以上の種付け頭数を記録した種牡馬は44頭(社台スタリオンステーションが20頭、日高地区が24頭)、総種付け頭数は7215頭を数える。種付け頭数は、その種牡馬の人気のバロメーターであるが、その種付け頭数について、少し中身に分け入って分析してみよう。
<種牡馬としての新鮮さが人気を集める>
44頭の種牡馬の顔ぶれを眺めていると、生産者がいかにフレッシュな種牡馬を指向しているのかがよく分かる。44頭の種牡馬のうち半分弱の20頭が、供用1、2年目の種牡馬なのだ。初年度供用種牡馬の種付け頭数トップはドレフォンの207頭、以下コパノリッキー(194頭)、シルバーステート(191頭)と続く。供用2年目種牡馬トップはドゥラメンテで、以下モーリス、アジアエクスプレス(205頭)の順。この供用1、2年目の種牡馬の総種付け頭数は3370頭にも達し、実に種付け頭数全体の3割を占めることとなる。引退後間もない印象度の高い種牡馬を種付けし、セリで高く評価してもらいたいという生産者の心理が、種付け頭数に如実に表れている。
<種付料と種付け頭数の関係 社台と日高は全然違う>
社台スタリオンステーションでの種付け頭数上位の種牡馬の種付料は250~400万円。ドゥラメンテやモーリスに加え、ルーラーシップ(243頭)、エピファネイア(220頭)といった種付け頭数200に達した種牡馬のほとんどが、この種付料に収まる。日高の生産者が生産馬販売用に種付けする上限種付料がこのあたりといえるのではないか。唯一の例外、種付け頭数トップのロードカナロア(種付料800万円)は、おそらくかなりの数を社台グループの種付けが占めていて、日高の種付け比重はそれほど高くないのではと思う。
一方、日高の種牡馬は種付け頭数上位5頭中4頭までもが、種付料60万~80万円のレンジに収まる。アジアエクスプレス、コパノリッキー、シルバーステート、ホッコータルマエ(182頭)が該当する。ダート界のチャンピオンや、未完の大器というべき新鋭、しかもいずれも供用1、2年目というフレッシュな種牡馬に人気が集中しているのだ。唯一の例外は実績馬ヘニーヒューズ(192頭・種付料350万円)だ。
<血統のトレンドを探ると……>
サンデーサイレンス系種牡馬が14頭で総種付け頭数が2194頭、キングカメハメハ系種牡馬が8頭で1526頭と双璧をなすが、以前よりサンデー系はシェアを落としているように思われる。サンデー直仔は16歳以上のディープインパクト、ハーツクライ、ダイワメジャーの3頭のみ。ディープインパクト直仔4頭の中に200頭超えの種牡馬はいない。来年産駒がいよいよデビューを果たすキズナ(152頭)の成績に注目が集まる展開になりそうだ。一方、キングカメハメハ系は、ロードカナロアやルーラーシップの成功が血統への信頼感につながっているようだ。今の勢いはキンカメ系にやや分があるかもしれない。
そのほか、ストームキャット系(ヘニーヒューズやドレフォンなど)、エーピーインディ系(マジェスティックウォリアー、シニスターミニスターなど)が、産駒の実績と配合のしやすさも相まって、人気を集めている。
多頭数交配が常態化し、数を付けないと種牡馬の成績アップが見込めない中にあって、生産者がどういった種牡馬を選定するか駆け足で見てきた。サンデーサイレンス登場以降、日本の競走馬のレベル向上は著しいものがあったが、次代を担うポスト・サンデーはまだ現れていない。種牡馬をめぐる試行錯誤はこれからも当分続きそうだ。