2014年8月25日
今年もカタール旋風!
世界の競馬を動かすパワー
7月14日、15日の2日間にわたって開催された今年のセレクトセールも無事終了。2日間で上場馬475頭のうち404頭が落札され、落札総額は125億7505万円、落札率は85・1%、平均価格も3113万円に達し、昨年記録した売上レコードを更新した。
ご購買者の皆様には、本年も多数の上場馬をご購買いただき、誠に有り難うございました。
昨年このセールに参加し、旋風を起こしたカタール王族のファハド殿下。代理人のデヴィッド・レッドヴァース氏を通じ、5頭を計1億7400万円で競り落としたのだが、当時の共同インタビューで、レッドヴァース氏は次のように語っていた。
「上場馬の質は、キーンランドやタタソールズに匹敵、いや、それ以上の素晴らしい馬ばかりでした。こんなに運営のしっかりしたセールは世界中のどこにもないし、会場の美しさ、素晴らしいホスピタリティ、コンサイナーの高い技術など、感動することばかりでした」
このコメントを読んだとき、運営側の一人として大変嬉しく思った半面、多少なりとも外交辞令が含まれているのかなと思っていた。しかし、蓋を開けたら今年は昨年以上の購買意欲で、9頭を計8億7000万円で落札。代理人のレッドヴァース氏は、今年のトップバイヤーに躍り出た。
初日の1歳市場は1頭のみの落札だったが、「リッスンの2013」を2億6000万円で購入。初日のトッププライス馬のバイヤーとなった。
圧巻は2日目の当歳市場。「ミュージカルウェイの2014」を1億8000万円で落札したのを皮切りに、ダービー馬ディープブリランテの妹や、ダートで活躍したケイアイガーベラの初仔など、ディープインパクト産駒の良血馬を中心に、日高からの上場馬も含めた計8頭もの当歳馬を購入したのだ。
一方で、フランケルの初年度産駒「グッドウッドマーチの2014」をカタールブラッドストック社として上場。今年の当歳牝馬では最高価格となる9600万円で販売した。フランケルの初年度種付け料は日本円で約1750万円。受胎牝馬を日本へ輸出し、浦河の牧場生産として、セレクトセールをめがけて上場したのだから、その戦略の一貫性には大変感心させられた。
ファハド殿下は昨年11月、JRAの馬主免許を取得されている。昨年のセレクトセールにおいて9000万円で購入した「ピンクパピヨンの2012」(競走名キングパール)は、栗東の新鋭・中内田厩舎からデビューする予定だ。
サラ北海道事務所・遠藤幹ブレッド事業に本格参入してまだ4、5年と聞くが、11年のメルボルンCや香港ヴァーズを勝ったドゥーナデンをパールブラッドストック社名義で所有し、13年のジャパンCにも参戦(5着)した。また、昨年の凱旋門賞でオルフェーヴルを破ったトレヴの所有者・ジョアン殿下は、ファハド殿下のいとこ。その凱旋門賞は08年からカタール競馬馬事クラブがスポンサーになっており、賞金も大幅に増額されている。
競馬の話から少々外れるが、カタールは国民1人あたりのGDPが約1000万円、6世帯に1世帯は1億円以上の金融資産を持つ超金満国家である。その首長一族の本格競馬参入なのだから、全てにおいて桁外れになりそうだ。
カタール王族の方々が持つ競馬への大変な関心には、本当に頭が下がるし、その動向から目が離せそうにもない。来年のセレクトセールには、どんなスタンスで参加されるのか、今から要注目ではないだろうか。
※文中の金額は税抜