2018年8月25日
セレクトセール2018を終えて
7月9・10日の両日にわたって開催された本年のセレクトセール。1歳馬・当歳馬合わせて464頭が上場され416頭が売却、売却率は89.7%、売却総額179億3200万円、平均価格4311万円と、過去最高を記録した昨年の成績を超え、驚くような数字を叩き出した。
社台グループの上場馬は例年同様に素晴らしい売れ行きだったが、グループ以外の上場馬も例年以上に健闘している。上場馬184頭中143頭が売却され、売却率77.7%、売却総額37億円、平均価格2587万円と、なかなかの成績なのだ。数年前は社台グループ以外の上場馬に関しては、リザーブ価格を少々上回る程度で落札される馬が多かったように思う。しかし今年のセリに関しては、リザーブ価格を大きく超えて落札される、つまり複数の買い手がつき、価格がどんどん競り上がるケースもかなり見受けられた。
キタサンブラックの全弟(シュガーハートの2018、父ブラックタイド、(有)ヤナガワ牧場上場)は1億2500万円、エポカドーロの半弟(ダイワパッションの2018、父ドゥラメンテ、田上徹氏上場)は7200万円まで競り上がり、活躍する兄姉馬のインパクトが落札価格にも大きな影響を与えていた。そこまでの価格ではないにしろ、私が日頃お付き合いのある家族経営の牧場が、2頭の当歳馬を合計3800万円(リザーブ価格は2頭で1800万円、種付料は2頭で250万円!)で売却した例など、このセリでの販売に賭けて、見事報われた上場者の方も多かったように思う。
日本の種牡馬界を代表するディープインパクトとキングカメハメハに限らず、数多くの種牡馬の産駒が1億円以上で落札されたのも、今年のセリの特徴だった。ジャスタウェイ、スクリーンヒーロー、ドゥラメンテ、ハーツクライ、ブラックタイド、モーリス、ロードカナロア、他に外国繋養種牡馬2頭と、その数は11頭にも上り、一部の種牡馬の産駒に人気が偏ることのない、健全かつ成熟したセリだったと言えるのではないだろうか。
購買者の方にとって、大変高く感じる今年の買い物だったかもしれないが、昨年にも増して上場馬のブラックタイプのレベルが上がっており、かつ馬体も大変素晴らしい馬が多かったとの感想も耳にする。将来の活躍が見込まれる優駿が数多く上場されていることに変わりはなく、やがて多くの購買者の方々に喜びと感動を与えてくれるものと確信している。
市場運営に関わる私どもとしては、公正かつ円滑な市場運営を行い、購買者の皆様に気持ち良くセリに参加していただけるよう、心を砕いている。
木漏れ日がさす涼しい屋外で、北海道ならではの食材を使った美味しい料理や種類豊富な飲み物を、お好きなだけ召し上がっていただく。緊迫感に包まれた、白熱したビットの応酬の末に、お目当ての愛馬を見事射止めた時の興奮と感動を味わっていただく。落札したばかりの愛馬と一緒に記念写真に収まりつつ、関係者の賞賛と祝福を受ける、などなど。世界にここだけしかない非日常空間の中で、購買者の皆様に楽しくセリに参加していただき、お過ごしいただければと切に思う。
私にとってセリの成功は、ひとつには販売者としての喜びであり、すなわち馬産地で働く者としての喜びでもある。また、取引馬の活躍は、購買者の期待が現実となった瞬間であり、これまた非常に嬉しいことだ。販売者と購買者を橋渡しし、多くの夢や希望を実らせるセレクトセール。その末端を担い、運営に携われることを、私はこの上なく幸福に感じている。