2009年4月1日
09年4月 馬産地の異変
種付の実態とナイターへの期待
ノミネーション売買の変化
4月上旬ともなれば、 種付シーズンも最盛期である。 朝から日高の国道を馬運車が行き交い、 どの種馬場も慌しい1日となる。
私の勤務先のブリーダーズスタリオンも、 グラスワンダー、 スウェプトオーヴァーボード、 そして新種牡馬のブラックタイドが人気を集めているお蔭もあって昨年以上に忙しい日が多い。
ただここに来て、 生産者の種牡馬選択の傾向が例年と違ってきていることに気がついた。
今年のノミネーションの取引は、 12月~2月上旬にかけては例年通りの状況で推移した。 社台スタリオンの人気種牡馬の余勢に申込が集中する一方、 グラスワンダーやステイゴールド、 高齢になったとはいえランキング上位のブライアンズタイムといった日高地区の200~300万円クラスの人気種牡馬も順調に申込数を積み上げ、 盛んにノミネーションも売買された。 この時期は社台スタリオン繋養の一部人気種牡馬のノミネーションも活発に取引された。
風向きが変わってきたのは2月下旬あたりからだろうか。 各社の種牡馬展示会も終了し、 例年であれば高額種牡馬から中堅種牡馬に取引の中心がシフトする頃、 今年は高額種牡馬の取引がぴたっとなくなり、 従来は5月以降のシーズン終盤に取引されるような低額種牡馬の申込がどっと増えてきたのだ。
4月に入ってからはその傾向が顕著になり、 200~300万円といった高額種牡馬のノミネーションがだぶつく一方で、 10~15万円の格安ノミネーションが良く売れている。 1月当初の取引価格よりも現在のほうが割安なものも多くなり、 値崩れ一歩手前の種牡馬も少なくない。
生産者の方々は、 異口同音に 「今年は馬が売れないだろうから、 無理な種付料の投資は控えたい」 とおっしゃるが、 日本経済の急激な落ち込みは馬産地ではまだ実感とはなっていない。 というのも、 今年のセリがまだ始まっていないからだ。
4月下旬のJRAのブリーズアップセールを皮切りに、 トレーニングセール、 当協会のセレクトセール、 日高軽種馬農協のセレクションセールと開催される予定だが、 その過程で現実の厳しさを思い知るときが来るのだろうと誰もが考えている。 その先行きを考えれば、 ここで種付料に多額の費用はかけられないと引き締めに入り、 縮こまっているのが馬産地の現実だ。
この 「縮こまり」 の姿勢は当面はやむを得ないものかもしれないが、 軽種馬生産の基礎となる種付料という初期投資の減少が、 馬の値段のさらなる下落につながらないか不安になる。 いずれにせよ、 ノミネーションの売買がこんな経過をたどる年は記憶にない。 産地全体に元気がないのが非常に気になるのだ。
馬産地で本格ナイター競馬
新生 「ホッカイドウ競馬」 は4月29日に札幌競馬場で開幕し、 5月20日からは門別競馬場でナイターが始まる。 ナイター競馬のネーミングもフランス語で北斗七星を意味する 「グランシャリオナイター」 に決定した。 馬産地7町の共同競馬の意味もかけているのだそうだ。
そのナイター試走が4月9日に行われた。 1周1600メートルのコースに42基の照明塔が設置されて馬場が煌々と輝く光景は、 照度は大井競馬場と同等とはいえ、 都市部のナイターと違ってあたりが漆黒の闇のせいか、 さらに際立って明るく感じられた。
新装なった夏スタンド内では、 JBC協会の資金援助によって設置された310インチの 「JBCビジョン」 から迫力あふれる映像が放映された。 館内に椅子、 テーブルが設置され、 食事提供スタンドも営業を始めれば、 快適な空間のなかでレースを楽しむことができそうだ。
実を言うと胆振日高地方の人口を考えれば、 門別競馬場には1000人もの入場者があれば上々だ。 すなわち、 本場の売り上げ比率は小さくても、 他の競馬場との相互発売やネット投票によって売り上げを確保するためのナイター競馬なのである。
とはいえ、 馬産地における本格ナイター競馬であり、 馬産地に住むものにとっては大変楽しみなのも事実である。 本州ほど暑くはならないが、 今年の夏はビール片手 (もちろん運転手の確保が大前提!) にナイター競馬に繰り出したいと思う。