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日高便り

2011年2月24日

馬産地にも春の気配

早くもディープは春爛漫

北海道事務所 遠藤 幹

 昨年ほどではないものの今年も寒い冬だ。幸い雪は少ないのだが、連日真冬日が続き、明け方は零下10度前後まで冷え込む日々が続いている。
 しかし、寒い冬ながらも確実に春の足音は近付いている。2月上旬から種付けシーズンが始まり、間もなく日高街道を馬運車が西へ東へ往来する情景が日常的になることだろう。
 2月中旬には各種馬場ごとに種牡馬展示会が連日行われる。多数の生産関係者が種牡馬の選定のために、あるいはさまざまな情報の収集のために集まってくる。これも馬産地ならではの早春の風物詩だろう。
 生産牧場の繁殖厩舎では、夜の10時頃まで明かりをつけて牝馬の発情を促す「ライトコントロール」が行われ、暗闇に沈む牧場のなかで、明かりが漏れる厩舎がところどころに点在している。
 牝馬の発情を早く起こさせて種付けを早め、早生まれを増やして当歳市場に向けて見栄えの良い産駒を作りたい。セレクトセール当歳市場の成功に影響され、どの生産牧場でも以前と比較すると種付けは早くなっているのだが、寒い時期の当歳の管理が大変なことと、セリが当歳から1歳市場にシフトしていくなかで、牧場の戦略も少々変わりつつあるようだ。
 牝馬の子宮の回復を待って種付けをしたほうが受胎率が高いといった海外の研究データをもとに、繁殖牝馬の1発情目は種付けを見送り、次の発情時に種付けを行うという牧場も少なくない。実際、一部種馬場では「初回発情での種付けはご遠慮ください」という基本スタンスで種付け予約業務を行っている。
 しかしその一方で、特定の人気種牡馬に種付けが集中する現在の状況では、1発情見送ることによって次回種付けが困難になることも多く、また牝馬の次回発情が規則正しくやってこないこともあり得る。私が知り得る限りでは、大手牧場は軒並み「初回発情」で種付けを行っており、このあたりは牧場によって種付け適期の考えの違いが浮き彫りになっている。
 サラブレッドは寒さに強く暑さに弱い動物といわれているが、高齢者が寒さに弱いのは、馬も人も同じだ。そんなこともあって、シンボリ牧場が管理していたシンボリルドルフ号も北海道の冬を避けて千葉の牧場に移動しており、昨秋のジャパンカップの折は20数年ぶりに東京競馬場にお目見えした。歳を重ねて種牡馬時代よりやや目方が軽くなったように感じたが、逆に現役時代に体型が近付いたような感じを与え、皮膚のつや、馬体の張りは29歳の高齢とはとても思えない、大変素晴らしい状態に映った。温暖な千葉での生活が、やはりルドルフには快適なのが見て取れたのだった。
 現在の競馬シーンにおいて、春本番が近付いている種牡馬がいる。日本競馬史上シンボリルドルフを超えた「最強馬」の称号をほしいままにしたディープインパクトだ。昨年デビューした2歳馬が驚異的な走りを見せて、2歳サイアーとして数々の記録を塗り替え、チャンピオンに輝いたのは周知の通りだが、年が明けてさらにその勢いは本物になりつつある。
 リベルタスが若駒S(OP)を勝ち、トーセンラーはきさらぎ賞(GIII)を制した。産駒4頭が出走したエルフィンSではマルセリーナが優勝し、残り3頭も掲示板を確保した。そのほかラジオNIKKEI杯(GIII)勝ち馬のダノンバラード、朝日杯フューチュリティS(GI)2着のリアルインパクト、2戦2勝のサトノオーなどなど、有力馬が目白押しの状態である。
 この拙文が出るころには、種牡馬ディープインパクトは春爛漫になっているかも知れない。それがしいては今年のセレクトセールの成績に直結するのであろうし、セールが大いに湧き返ることを期待したい。

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