2007年10月1日
北海道競馬改革の行方
旭川から撤退し新公社が運営
先頃、 北海道が 「北海道競馬改革ビジョン (素案)」 を北海道地方競馬運営委員会に提示したが、 その内容が報道機関や競馬関係者に示されるなかで、 北海道競馬の今後のあり方について議論が活発化している。
改革ビジョンの基本的な考えは、 「産地に立脚した北海道競馬の優位性を最大限に発揮し、 さらなる売り上げの拡大と経費削減を図りながら、 平成22年度までに 『赤字脱却=単年度収支均衡』 の実現を図る。 仮にこの見通しが破綻する場合は競馬事業を廃止する」 という非常に厳しいものである。
今後の取り組みの方向としては、 次の3項目を軸に具体的な改革案が示されている。
①産地による(社)北海道軽種馬振興公社への増資と主要役職員の派遣などにより産地主導の新公社に転換し、 民間センスを最大限発揮して効率的な競馬運営を実現する。 累積赤字は北海道で処理し、 道や産地の関係団体が応分の基金を積み増す一方、 道は予算等の根幹事項のみを担当し、 競馬の実働部隊は新公社とする。
②旭川から平成20年度をもって撤退し、 門別競馬場を本場化する。 ナイター施設及び集客エリアを低コストで整備し、 競馬と食をゆったりと楽しめる競馬場づくりを行う。
③経営効率の優れたミニ場外 (Aiba) を効果的に設置し、 他場との連携を強化する。
北海道競馬の経営改善については、 平成12年末から多岐にわたる改革が進められてきた。
組織改革、 諸経費の削減は当然のこととして、 北海道競馬が初めて試みた独創的な取り組みには、 ミニ場外の設置 (現在10箇所)、 競走馬の流通機能を生かしたトレーディングレースやセールの実施、 認定厩舎制度 (外厩制) の導入、 産地の協力によるスタリオンシリーズの実施などが挙げられる。 それと並行して、 他場との発売連携や南関東の電話投票システムを利用した馬券発売をはじめ、 発売網の拡大、 充実も図ってきた。
その結果、 売上額は平成14年度から4年連続で前年実績を上回り (14年度98億2000万円↓18年度119億3000万円)、赤字額もピーク時の三分の一 (13年度28億4000万円↓18年度10億9000万円) にまで縮減している。
収支均衡まであと一歩のところまで来ているが、 「あと一歩」 が果てしなく大きいことも事実である。 平成13年度は29億5000万円ほどあった報償金 (賞金諸手当の合計) は平成18年度には19億2000万円余と約35%も削減されており、 生産者馬主の多い北海道競馬の特殊性を考えれば削減は限界に近いといえる。 そういった現状において 「競馬廃止」 が明文化された今回の改革ビジョンに対しては異論も少なくないようだ。
しかし、 このまま手をこまねいていては、 他の地方競馬と同様の経緯を辿って廃止決定が下されかねない。 期限が設定されたとはいえ、 民間的センスと馬産地の英知を結集して、 新に北海道競馬をつくるという提案には大きな期待をしたいと思う。
では、 民間的センスと馬産地の力で北海道競馬をどう変えていけばいいのか。 公社のトップに立つ方には卓越した経営手腕と競馬に対するする情熱が求められ、 スタッフには、 とにかくやれる手立てを全部やる、 という強い意気込みが求められる。
競馬運営にポイントを絞って、 私なりに振興策を考えてみた。
本場の売り上げ比率が10%未満の北海道競馬とはいえ、 生の競馬が面白く、 競馬場が楽しくなくては再生などありえない。
スタンドの改修やナイター施設の新設、 映像設備の改善を行い、 楽しい競馬を演出したい。 華美なレストランは不要だが、 地元の旨いものを食べさせてくれるコーナーもほしい。
北海道競馬のメインである2歳戦を楽しく面白いものにするための仕掛けも重要だ。 地方競馬では最大規模を誇る門別競馬の特長を生かし、 番組体系もバラエティに富んだものにしたい。
産地競馬の特色を最大限に発揮し、 競馬場と牧場、 地場の名産グルメなどをセットにした定期ツアーや、 駐車場とスタンドを馬車でピストン輸送するなど、 馬産地ならではの競馬の楽しみ方をファンに提供したい (日高は海産物の宝庫である)。
ばんえい競馬もソフトバンクの関連会社が競馬実務を担当してから明るく面白くなったと聞く。 北海道競馬は長らく役所 (官) の主導で何事も行われ、 産業全体が官に依存してきた。 北海道競馬の改革は、 その官への依存との決別を意味する。 そのためにも何としてもこの改革をやり遂げ、 北海道競馬の再生を図らなければならないと思う。