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日高便り

2012年6月20日

日高地区 最新種牡馬事情

種牡馬17頭が百頭超に種付

北海道事務所・遠藤 幹

 馬産地・北海道も6月に入ると種付業務は最終盤にさしかかり、種馬場に掲げる種付ボードにもやや空欄が目立つようになってきた。
 今年の日高は3月から4月中旬にかけて寒い日が続いて、例年より春の訪れも遅かった。そのため繁殖牝馬の体調も今ひとつだったのか、この時期に種付した牝馬の再発(初回の種付で受胎せず、再度発情を見せて種付すること)率が高く、どこの種馬場でも、生産者の方々の「とまりが悪い」といった嘆き節が聞かれた。しかし放牧地に青草がびっしり生えそろう頃には、例年同様の受胎水準にまで回復しているように思われる。
 この時期には、各種牡馬の種付数の正式発表はまだないが、社台スタリオンの種牡馬陣は別格として、今年日高最多の交配数を記録したのは、JBBA静内種馬場で供用されているエンパイアメーカー(種付料250万円、前払・不受胎時返金)で間違いないだろう。昨年も204頭の配合をこなしたエンパイアメーカーは、今年はすでに種付数220頭台に到達している。海外に残してきた産駒の活躍はいうまでもなく、中山記念勝ち馬フェデラリストをはじめ、日本に輸入された産駒も軒並み能力が高く、トウショウボーイ以来の「日高の救世主」になるのではという声さえ出始めている。
 昨年は日高最多の249頭の交配数を記録したステイゴールド(ビッグレッドファーム繋養)も元気いっぱいだ。今年も皐月賞馬ゴールドシップ、ダービー2着のフェノーメノを輩出し、種牡馬としての評価は揺るぎのないものとなっている。三冠馬オルフェーヴルの出現もあって、種付料は昨年の250万円から一気に2・4倍となる600万円(受胎条件)に設定されたにもかかわらず、今年も190頭もの牝馬と交配した。受胎率の高さは以前から定評があって、ここにきて日々の種付もだいぶ少なくなり、暇な時間も割合多いという。歳を重ねてやや落ち着きを見せてきたステイゴールドだが、その本性は気性の激しいサンデーサイレンス系そのもの。勝負根性に優れたレース向きの気性は健在で、まだまだ産駒の活躍が見込めるだろう。
 日高地区3番手は、180頭の交配をこなしたディープスカイ(出生250万円・ダーレースタリオンコンプレックス繋養)だ。アグネスタキオンの後継として、ダービー、NHKマイルCを制した強さとスピードがこの種牡馬の持ち味だ。供用3年目で昨年の115頭から一気に5割増と大きく種付数を伸ばしたのは、仔出しの良さが評価されてのことだろう。
 メイショウボーラー(受胎50万円・イーストスタッド繋養)も170頭台の交配を記録した。タイキシャトルの後継として、初年度産駒が昨年デビュー。コンスタントに活躍馬を送り出して、昨年の105頭から大きく種付数をアップさせた。割安な種付料も人気を集めている要因のひとつだ。
 4、5番手には150頭台後半の交配をこなしたブラックタイド(受胎50万円・ブリーダーズスタリオン繋養)とカネヒキリ(受胎60万円・優駿スタリオン繋養)の2頭が並ぶ。ブラックタイドは初年度から4シーズン連続で140頭以上の交配数を確保。道営競馬で一足早くデビューした初年度産駒のラブキンゾウが緒戦勝ちを果たすなど、幸先のよいスタートを切っている。この拙稿が出る頃には、中央でも産駒が何頭かデビューしているはずで、その成績にも期待したい。
 カネヒキリも供用2年目で相変わらず高い人気を誇る。惚れ惚れする好馬体は種牡馬入りしたときから評判を呼んだが、その資質は産駒にも確実に受け継がれている。
 調査したところ、以下、140頭台=サウスヴィグラス、ロージズインメイ、130頭台=アドマイヤムーン、120頭台=ホワイトマズル、サムライハート、110頭台=マツリダゴッホ、アグネスデジタル、ファスリエフ、100頭台=オレハマッテルゼ、タイキシャトル、ベーカバド、ナカヤマフェスタと続いて、交配数100頭を超える日高地区繋養の種牡馬は現時点(6月8日現在)で17頭を数えている。
 産駒実績のある高額種牡馬が人気を集める一方で、血統、競走成績の割に種付料がリーズナブルな種牡馬も大変人気を集めているのが、昨今の種牡馬事情だ。このクラスの種牡馬の産駒が大駆けすると、生産界はちょっとした下克上になるのだが、果たしてどうだろうか。

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