2009年10月1日
新レポジトリーに高い評価
デジタル化で閲覧率が大幅増
「セレクトセール2009」 から早くも3カ月経ったが、 改めて全夏のセレクトセールで実施したレポジトリー (獣医学的資料閲覧室) の改善とその結果についてご報告したい。
ご存じのように、 レポジトリーでは1歳上馬馬の四肢レントゲン写真と上部気道の動画を公開している。「セレクトセール2006」 で1歳市場を再開するにあたり、 血統や外見だけではなく、 運動能力をつかさどる脚部の関節と呼吸器の資料を獣医学的に検査することによって、 購買馬の選定に役立たせてもらうという趣旨で平成18年に開設された。 レポジトリー開設時から私はこの運営に携わってきたが、 極めて高価な買い物となる競走馬の購買においては、 レポジトリーの果たす役割は少なくないと確信している。
今回の改善点は、 上場者から提出されるレポジトリー用資料 (レントゲン写真とDVD映像) を100%デジタル化したこと。 これによって、 インターネットによるセリ開催前の事前閲覧 (オンラインレポジトリー) が可能になったうえ、 会場内レポジトリーでも、 これまでよりずっと簡単にパソコンのディスプレイで鮮明な画像、 映像を閲覧できるようになったのだ。
オンラインレポジトリーはセリ10日前の7月3日から、 競走馬協会のホームページで簡単な登録をしていただくことによりアクセスできる。 セリ当日のあわただしいなかではなく、 いつでも好きなときに資料を閲覧できるのが最大の利点だ。
会場内レポジトリーも利便性が格段と向上した。 受付でICカードを受け取り、 専用パソコンでマウスを操作するだけで、 上場全馬のレポジトリー資料を確認できるようになった。
たとえば四肢のレントゲン写真では、 今までは1頭につき34枚組 (総重量は500g!) の大判レントゲン写真をその都度受付から借り出しては、 シャーカステン (白い電灯器付きの器具) に1枚1枚張り付けながら閲覧していたものが、 クリック1つで閲覧したい馬を選び出し、 四肢34箇所の写真データを次々とチェックできることになったのだから、 作業時間と作業量が大幅に短縮化、 軽減化され、 結果として短時間で大量の資料を確認できるようになった。
このシステムの開発に当たっては、 社台ホースクリニックの田上先生、 ノーザンファームの中島先生、 社台ファームの加藤先生に全面的に監修していただき、 貴重なご意見をうかがいながら、 システムエンジニアの方にシステムの構築を依頼した。
医療用の精密なレントゲン画像をいかに軽量化しながら品質の良い画像にするか、 オンラインレポジトリーの写真データの流出を防ぐ仕組みはどうするのか、 シャーカステンで閲覧する感覚をパソコン上に表現するにはどうすべきか、 データの集積はいかに行うかなどのポイントをひとつひとつ確認しながら、 解決していった。
利便性が格段に向上したレポジトリーの閲覧状況は飛躍的に伸びた。 閲覧総数は、 レントゲンと動画を併せて1599件。 うちオンラインレポジトリーが1015件、 会場内レポジトリーが584件だったが、 昨年は会場のみの公開で延べ460件だったから、 閲覧件数は3・5倍に急増した。 閲覧者数も128名と昨年より90名増加し、 閲覧された上場馬も98・1% (156頭中153頭) に達し、 昨年の66・9% (151頭中101頭) から大きく上昇した。 レポジトリーは、 ネットとの親和性が格段に高いことがこの閲覧結果からも窺い知れる。
ネット環境によっては軽快に画像を閲覧できない事例が報告されるなど、 新レポジトリーの実施を通して来年度の課題も浮き彫りになったが、 閲覧した獣医の先生方からはおおむね高い評価をいただくことができた。
レポジトリーは、 セレクトセールを蔭から支える黒子的な存在ではあるが、 今年のセールで1歳上場馬の売却率が過去最高を記録するなど、 上場馬の販売にいくらかでも貢献することができたのではないかと密かに自負している。