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日高便り

2019年8月26日

セレクトセール2019を終えて

北海道事務所・遠藤 幹

 7月8日、9日の両日にわたって開催された本年のセレクトセール。1歳馬・当歳馬合わせて455頭が上場され416頭が落札された。落札率は91.4%、落札総額205億1600万円、平均価格4932万円と、驚くような数字を叩き出した。落札総額は7年連続のセールレコード、200億円台に乗ったのは史上初、落札率で90%台をマークしたのも史上初、平均価格も史上最高という空前の大盛況に沸いた。1億円以上で落札された上場馬の頭数も1歳馬21頭、当歳馬20頭の計41頭と、過去最多頭数を記録した。
 何から何まで型破りのスケールのセールとなり、私自身はただただ驚くばかりで、購買者の皆様方には感謝の言葉しかない。この場を借りて厚く御礼申し上げます。有難うございました。

 ただ今思えば、セールが記録的なものとなる予兆はあったのかもしれない。今年5月には、アドマイヤマーズ(NHKマイルC)、ノームコア(ヴィクトリアマイル)、ラヴズオンリーユー(オークス)、そしてロジャーバローズ(日本ダービー)と、セレクトセール出身馬が4週連続でG1レースに優勝するという快挙を成し遂げた。馬主の皆様の夢である最上級馬、特にクラシックを制するような優駿をお持ちになるには、セレクトセールで愛馬をお求めになることが一番の近道であるということを、改めて強烈に知らしめる効果があったようにも思う。
 もう一点、私自身はセリの最中にいつも気付かされる(社台グループ社員の皆様には事前に織り込み済み?)ことなのだが、毎年新たな購買者の方が続々と登場されていることである。セール中に初めて登場するお名前とご購買されたビッグプライスに驚き、当方などはセール業務と並行してネット検索で確認することもしばしばである。新規にセールに参加される皆様の強い思いと、セールへ導いた上場者の皆様の努力の双方が結実した結果であり、これら要因が相まって今年のセールが形作られている。私には、ただただ感謝の気持ちしかない。
 選りすぐりの優駿が上場され、ホスピタリティ溢れる環境の中でセールが開催される。そして取引されたサラブレッドが中央競馬を始め世界の舞台で活躍する……。その不動のサイクルを作り上げたセレクトセールのブランド力の強さ。購買者の皆様にとって、大変高く感じる今年の買い物だったかもしれないが、取引された愛馬の競馬成績が明らかになるにつれ、皆様に喜びと感動を与えてくれるものと確信している。
 市場運営に関わる私どもとしては、公正かつ円滑な市場運営を行い、購買者の皆様に気持ち良くセールに参加していただけるように、この結果に慢心することなく、さらにより良いセールに推し進めるための努力をたゆまず行っていきたい。私にとって、セールの成功は販売者の皆様の喜び、すなわち産地で働く者としての喜びにつながり、またセール取引馬の活躍は、購買者の皆様の成功が現実化した瞬間、かつセール自身の評価を再確認する瞬間であり、これまた何より嬉しいことなのだ。販売者と購買者を橋渡しするセレクトセール。その末端を担う私にとって、セール運営に携われること自体が誇りなのだ。

 この原稿を書いている最中に、日本競馬界の至宝、ディープインパクトの悲報が届いた。頸椎の故障のため今シーズンの種付け業務を2月上旬に打ち切り、来シーズンへ向けて再起を図っていた矢先の出来事だった。本馬の冥福を祈り、関係者の皆さんに衷心よりお悔やみを申し上げます。
 日本競馬史上に輝く大競走馬が、ディープインパクトだった。三冠始め国内の大レースをことごとく制し、「飛ぶ」と主戦騎手の武豊さんが評された、その瞬発力とスピードは、後にも先にも本馬しか持ちえない天賦の才能であり、今現在に至るまで日本競馬史上最強馬であった。
 種牡馬になってからの活躍も素晴らしかった。昨年まで7年連続チャンピオンサイアーの座に君臨し、5頭のダービー馬を始め多数の優駿を輩出している。自身も2002年セレクトセール出身馬であったが、セレクトセール取引馬にもサトノダイヤモンドを始め11頭ものG1馬が誕生しており、この10年もの間、セールを最先頭で牽引し続けた。
 父サンデーサイレンス、母ウインドインハーヘアの良血の結晶は、現役時代も最強のまま、そして種牡馬になっても最強のまま旅立っていった。まだ残された優駿は数多く、その血はさらに日本や世界の生産界に大きな枝葉を広げることだろう。「大きな衝撃」を競馬界に燦然と与え続けたディープインパクト、本当にありがとう!

※文中の金額は税別。

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