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日高便り

2018年2月26日

種付けシーズン秒読み段階

北海道事務所・遠藤 幹

 年明け1月13日、コパノリッキーが、日高町のブリーダーズスタリオンステーションに到着した。G1/Jpn1競走を11勝し、ダート王の座をほしいままにした同馬だが、栗毛の馬体を輝かせながら、あたりを見回し悠然と北海道の地に降り立つさまは、ある種の威厳を感じさせるものだった。
 休む間もなく、15日から試験牝馬を近づけて、コパノリッキーの反応を見ながら、種付けの練習が始まった。当たり前のことだが、どの牡馬も初めての体験。過去には、当初は全く牝馬に反応を示さなかった馬や、逆に興奮のあまり何をどうしてよいのかわからずにバタバタしているばかりの馬もいた。ところがコパノリッキーは初日から反応が良く、翌16日には、ものの5分もかからず牝馬にするりとまたがり事を終えてしまった。あまりのあっけなさに、スタリオンスタッフから笑みもこぼれ、「もうどっかで覚えてきたんだろう!」と軽口も出る。やはり何事も最初が肝心。馬によってそれぞれ癖もあり、すんなりいかないことも多々ある初種付けが、こんなにあっさり終わったのは当方も記憶がない。あとは「練習」あるのみで、最後の練習日に採った精液には量、活力とも十分すぎるくらいの精子が確認でき、種畜検査への体制も整ったのだった。

 年度代表馬キタサンブラックの活躍もあり、当場としては、昨年は繋養種牡馬産駒の活躍に心躍る場面も多かった。キタサンブラックはその実力もさることながら、北島三郎オーナーの所有馬で、鞍上が武豊騎手であることもあって、大変ファンの多いスターホースになった。
 そんなこともあって、その父ブラックタイドへの取材も激増したのだが、「ブラックタイドの子供たちに今後期待することは?」「今後さらなる種付料のアップ(今春は前年より50万円アップの受胎条件250万円に設定)をお考えか?」といった、当方で答えられないような質問を受けることもあり、残念ながら毎回小さな違和感を覚えたのだった。
 種牡馬管理者にとって、繋養種牡馬産駒の活躍は天からの授かりものであって、あくまでたまたまそういう結果が出ただけの話。種牡馬成績が良い馬、それほどでない馬にかかわらず、目前の仕事を日々こなしていく……ただそれだけを考えているのだが。

 1月30日、日高町はこの冬一番の最低気温マイナス18度を記録した。凍てつく寒さの中、当場の種付所で、種付けシーズンの人馬の無事と安全を願う祈願祭が執り行われた。神式の儀礼にのっとり、玉串を奉奠し、二礼二拍手一礼の作法で、祈りをささげる。種付所の中とはいえ、氷点下での儀式は、その気温も相まって身が引き締まる思いがする。本格化するシーズンを前に、オーナー様からお預かりした大切な種牡馬を、現場と事務局の共同作業の中で、申し込みを取り種付けし受胎させるように最善を尽くす。危険も伴う種付け業務を、人も馬も無事にやりきる。私は、安全祈願祭の玉串にその思いを込めて捧げた。
 2月14日には、当場の種牡馬展示会が開催される。500名を超える関係者が見守る中で、繋養種牡馬を展示し、一頭でも多くの種付け申し込みをいただけるように、スタリオンスタッフは種牡馬の状態に万全を期し、事務局スタッフは、簡潔明瞭で印象に残る種牡馬解説をするべく原稿を練るのだ。もうその頃には種付け業務も巡航速度に乗り、そのままシーズン終盤まで突っ走ることとなる。

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